アクティビスト(物言う株主)として知られる村上世彰氏らが関わる投資会社レノ(東京・渋谷)などのフジ・メディア・ホールディングス(HD、FMH)株の保有比率が17.95%から4.34%へ低下したことが10日、わかったフジメディアのToSTNeT-3による自己株取得で村上ファミリーは出ていったと思ったのですが,すべては売り切れなかったのですね。発行済株式(社外株式)の3分の1以上の取得なのに,按分比例での売却とは、かなり驚き…ではありますが、最後にコメントするように,別の意図を感じてしまいます(猜疑心の塊なのは職業病なので悪しからずm(_ _)m)。
同じ日にレオスキャピタルとSBIホールディングスが共同で提出した変更報告書では,ToSTNeT-3で一部売却していますが,一定数は継続保有しています。SBIなどToSTNeT-3で処分した当日のうちに0.04%を市場で再取得しています。まだフジメディアに興味があるようです。
少しでも目端の利く投資家であれば,ToSTNeT-3はフジメディアの株価が村上ファミリーのお陰で高値となっている価格で,利益を確定できるチャンスであることが分かります。それほど多くの投資家が利益確定に走ったのは予想外でしたが('◇')ゞ
さて,よい機会ですので,会社がアクティビストからToSTNeT-3を使って保有株を引き取るのがどうして不公正なのか,再度説明させて頂きます。総会屋などタチの悪い株主が,株式を買い集めて会社に高値で保有株を買い戻しを要求するいわゆるグリーンメーラーの行為は,日本法の下で禁止されております。上場会社においては,法定手続きを経ずにコッソリ行えば①違法な自己株取得に該当しますし,株主の権利行使をしないことを約束させて保有株を高値で買い取ったりすれば②利益供与禁止規制に違反します。
アクティビストからの自己株取得で問題となるのは,利益供与禁止規制(会社法120条)との関係です。アクティビストは対象会社の株式を取得して、様々な要求を突き付けて、要求を飲むように株主権を行使したり仄めかしたりします。会社が彼らから保有株を引き取る行為は,普通に考えると株主でなくすことで権利行使を阻止することを目的にしていると見ることができます。つまり,「株主の権利の行使に関し」の要件は満たします。
議論が分かれそうなのは,ToSTNeT-3での株式譲り受けが「財産上の利益」に該当するのかどうかというところ。最も問題となるのは,前日の終値=時価で取得することが「財産上の利益」に当たるのか,という点です。たしかに,時価で取得するなら,投資一任契約による市場取得と同じで,他の投資家よりも有利な取引をして利益を得ることはなさそうですし,実際に多くの法律家はそう考えているのではないかと
しかし,証券会社に委託して市場でちょぼちょぼと買い集めてもらうのと,大株主の申し出に応じて大量の保有株を特定のタイミングでドカンと引き受けることを同じものと考えることができるのか?
特定の株主だけが、マーケットインパクトを気にすることなく,特定の価格で大量に保有株を処分できることが,他の投資家に比べて極めて恵まれた立場であることは,少なくとも市場関係者の皆さんにはご理解頂けるのではないかと。
「財産上の利益」については,取締役の贈収賄に関する判例ではありますが,入手困難で公開価格を上回って初値がつくのが明らかなIPO銘柄について,公開価格であっても割当てを受けることは―「親引け」というのかな―,コレに当たるとされていますので(最決昭和63.7.18 殖産住宅等贈収賄事件上告審決定,永井敏雄・最高裁判所判例解説刑事篇昭和63年度291頁「新規上場に先立ち株式を公開価格で取得できる利益が贈収賄罪の客体になるとされた事例」参照),ToSTNeT-3のような時価であっても事情次第では「財産上の利益」に当たるといえるかと。しかも,「追加取得については,4000円でTOBを仕掛けてやる!」と自ら市場を煽って時価を引き上げたうえで,会社に引き取らせているのだから,とても胡散臭いわけで(かつてコンなのやコンなのもあった),ひとまとめにして包括的詐欺禁止規定の金商法157条・158条を適用してしまえという気も
ToSTNeT-3は通常は夕方頃に「明日のあさイチで取得するから売りたい人は売ってね」と公表する,ほとんど抜き打ち形式で行われるので,誰でも売却機会がある通常の市場取引とも異なります。売り手と買い手との間で話ができたうえで取引しているので、事実上の相対取引と言われたりします。今回は衆人環視のフジメディアvsアクティビストなので,少し早めに公表されましたが,似たようなものです。それゆえ,フジメディア・村上ファミリー双方が「相対取引じゃないから全部は売れなかった~残念!」と嘯いているのも,素直に受け取らない方がよいかと(なんとなく言い訳がましい)
川﨑汽船の自己株取得(ToSTNeT-3)開示は興味深い
再び川崎汽船の自己株取得について
以前コメントしたとおり,エフィッシモなどは,ToSTNeT-3の利用について不公正と見られないように,とても慎重に対応していると思います。ToSTNeT-3とアクティビストの取引が基本的に胡散臭いものという一般的な認識がないので,上記取引が注目されなかったのは残念ではあります(私はエフィッシモの関係者でもナンでもありませんが😅)。
当ブログでは今後もアクティビストと会社の間のToSTNeT-3取引については,基本的に不公正さを疑う余地があるものとして,しつこく繰り返し繰り返し,執拗にネチッこく,コメントしていくつもりです
