10月2日にカーケア製品のソフト99コーポレーションのMBO(経営陣が参加する買収)の応募期限を迎える。投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが高値で対抗TOB(株式公開買い付け)を実施するなか、MBO成立のカギは第2位株主のKeePer技研が握る。安値のMBOに応じるか否か、難しい経営判断を迫られているソフト99MBO側のTOBは,明日期限を迎えます。昨日のソフト99の株価は一転して前日比+435円も上昇して取引を終えましたが,市場関係者の評価も分かれているようです
記事によると第2位株主で応募契約を締結しているKeePer技研が今回の争いのキャスティングボートを握っているようです。MBO側のTOBに応募すれば,より高値のエフィッシモのTOBにどうして応じなかったのか自社の株主に説明する必要があるし,応募契約に基づいて応募しなければ契約違反となり,債務不履行責任を負うことになります。
確認すべきはKeePer技研の応募契約の内容です。最近馴染みとなったフィデュシャリーアウト条項(FO条項)=より有利な買収提案が出てきたら乗換えOKとする条項が,入っているのか否かということ。FO条項があれば躊躇なくエフィッシモに乗り換えるでしょうから,今の段階でKeePer技研の社長さんが悩んでいるとすると,おそらく入れていなかったのでしょうね。
応募契約に違反した場合に,会社が多額の損害賠償責任を負う可能性があるとなると,会社としては応募せざるを得ないが,記事の弁護士さんがコメントしておられるように,KeePer技研の経営陣は「MBOに応募せざるを得ないような契約ならば締結の是非も問われる」と私も思います。
やや古い話で恐縮ですが,ニッポン放送争奪戦のおりに,ライブドアの買収でニッポン放送株が高値を付けているなか,東京電力がより安値のフジテレビのTOBに応じたことがあります。この時,怒った東京電力の株主が株主代表訴訟で取締役の責任を追及ましたが,そのケースが参考になりそうです。
東京地判平成18年4月13日・判例タイムズ1226号192頁
東京高判平成18年10月25日・資料版商事法務274号245頁
いずれも経営判断原則が適用されて取締役の責任は否定されました。善管注意義務違反はないという判断ですね。地裁判決の方には以下のような指摘があります。
以上のとおり,ニッポン放送株式の市場価格は同年2月8日以降本件買付価格を上回る価格で推移したものの,その差は,市場価格が本件買付価格を約1割上回る程度であること,補助参加人が本件公開買付けに応じた目的が前記のとおり,経営上重要な取引先であるフジサンケイグループとの良好な関係の維持にあったこと,本件買付価格は,同年1月14日までの3か月間の東京証券取引所における終値平均4937円に約21パーセントのプレミアムを加えた価格であったことなどを勘案すれば,被告Y1らが、同年2月8日以降も,市場価格との差は許容される範囲内のものであると判断して,補助参加人の本件買付価格での応募を撤回せず,本件公開買付けによってフジテレビとの間に本件株式の売買を成立させるという選択をしたことが著しく不合理とはいえない簡単にいうと良好な取引関係を維持するメリットに比べると,1割程度安く売ったとしても(総額でも約1億円程度)著しく不合理とまではいえないよね,ということ。
ところが,今回のソフト99のケースは,差額の総額は1億円どころか40億円もあります(東京電力にとっての1億円とKeePer技研にとっての40億円という,企業規模と金額の関係にも注目すべき)。それを正当化するだけの取引関係が双方の間にあるのかどうかあたりが問題になりそうです。が…それ以前に,今回の場合は,近年多くの企業が採用しているFO条項を付けなかったことの合理性が問われることになるのでしょう(簿価より高値なので低い方に応じても損害ナシという評価もあるかもしれませんが)。
一つの落としどころとして,MBO側はKeePer技研の経営陣の判断が著しく不合理とはいえないといえる額まで,TOB価格を引き上げるかもしれないですね。そうか,ソフト99の株価上昇はそれを期待しているからかな?
かりにKeePer技研の取締役の責任が問われることになれば,今回の事件を契機にMBOや完全子会社のケースでも,持ち合い株主が応募契約にFO条項を求める慣行が広がるかもしれませんね。もしかしてエフィッシモの主たる目的はそこにあったのかな(^-^)
