「金を捨てるな。毒薬条項(ポイズンピル)のための長大な質問リストは弁護士をもうけさせるだけだ。ばかげている。(生成AI・人工知能の)ChatGPTにでも聞けばいいではないか」太平洋をまたぐオンライン会議の画面越しでも、日本企業に対する憤りが伝わってくる。アクティビスト(物言う株主)として知られる米ダルトン・インベストメンツのジェームズ・ローゼンワルド最高投資責任者(CIO)が米国からのオンライン取材に応じた。ローゼンワルド氏が非難するのは、製薬大手のあすか製薬ホールディングス(HD)とシャッターなど総合建材メーカーの文化シヤッターの対応についてだ日経ビジネス(オンライン)は一時期,退屈な記事が多く何の雑誌かわからなくなったので読むのを止めましたが,ここ数年は以前のようにM&A関連の記事がタイムリーに掲載されて嬉しいです
上記記事は最近お騒がせのダルトン代表者ローゼンワルド氏のインタビューです。あすか製薬の件については,何度かコメントしておりますとおり,当ブログはMBO強要型のアクティビストの活動には賛成しません
ところで,記事でも少し触れておりますように,ダルトンはフジメディアHDにも関与しました。フジの株主総会では株主提案が大差で否決されましたが「株主総会で負けたことに何らろうばいはなく、むしろ今後の展開に興奮している」と強がっております。
しかし,なぜ大差で否決されたのかについてもう少し反省すべきではないかと。放送事業者の取締役に外国人を入れてはいけないのに,ローゼンワルド氏を取締役候補にしたり,監査等委員会設置会社の候補で間違いを繰り返したり…。素人まる出しでした
実はこの記事の中でもローゼンワルド氏が日本の会社法実務を正しく認識していないことがわかります。些末な点からいうと,「ポイズンピルだけのため経営陣は本当に株主総会を開」くのか,とコメントしていますが,日本では珍しいことではございません。最近は攻める側も守る側も企業買収行動指針に基づいているので,あまりありませんが,比較的最近では富士興産も東京機械も意思確認のためだけに総会を開催しましたよね(コスモは定時株主総会でした)。
彼らが株主総会を招集するなら、株主は皆、株主提案をすることが可能になるだろう。例えば取締役の選任議案の株主提案などもだ正しく理解していないのはココ。わが国の株主総会で株主提案権が行使されるのは,ほぼすべてが定時株主総会です。なぜでしょう?(【追記】株主の総会招集請求に応じて開催された臨時株主総会で株主提案が議案になるのはもちろんですが、文脈的にここでの議論は会社主導の株主総会に限定したもの)
株主提案権(議案要領通知請求の方です)は,持株要件ばかり注目されていますが,総会の8週間前に提案権を行使しなきゃいけない点も要注意です。定時株主総会では基準日は定款に記載されていますし,例年同じ時期に開催されるので,総会の8週間前だとしても問題ありませんが,臨時株主総会はどうでしょう。基準日が分かってから,総会の8週間まえに株主提案権を行使できるか否かがポイントです。
①基準日公告に2週間(会社法124条3項)
②株主確認に約2週間
③招集通知の事前送付に2週間(2991項)
以上で6週間もあれば臨時株主総会は開催できます。会社が株主提案権行使を容認して,より長い準備期間を設けることもできますが,原則的には最短で開催するのが実務です。つまり,株主が8週間前に提案権を行使できないスケジュールが組まれるので,臨時株主総会では株主提案権は行使できません。臨時株主総会で提案権が行使されないのは制度上の理由からです
ローゼンワルド氏が活用を推奨している生成AIで質問しても「臨時株主総会でも株主提案権は行使できます」としか回答が出てこないでしょうが(☜私も質問してみました😅),日本の株主総会実務を知っているスタッフがいれば当然に理解しているべき事柄です(ローゼンワルド氏がこの件について日本人スタッフの助言を受けていないのか,日本人スタッフがそもそも知らないのか…)。一事が万事と申しますか,ダルトンは脇が甘いと感じざるをえません
【追記】
日経:米ダルトン、あすか製薬HD株の買い増し意向取り下げ
米投資ファンドのダルトン・インベストメンツなどは30日、あすか製薬ホールディングス(HD)株の買い増し意向を取り下げると発表した。同社株を議決権比率で最大30%程度まで買い増す意思があると8月に公表していた。あすかも買い増し目的などの質問状を取り下げる…だそうです。これにて一件落着
