2015年に不正会計が発覚して経営不振が続いた東芝。米原発の巨額損失、繰り返す大規模リストラ……。混乱を象徴するかのように、リーダーの顔ぶれも入れ替わった。彼らは落ちた巨大組織をどう導こうとしたのか。現場の奮闘を描いてきた連載「東芝再出発」。最終章の第5部は経営者たちの実像に焦点を当てるソフト99祭りは一旦お休みしまして,こちらの日経の連載についてコメントします。東芝の上場廃止からもうすぐ2年が経過しますが,当時を振り返り現状がどうなっているのかを知るにはよい頃合いですね
連載の趣旨は「経営者たちの実像に焦点を当てる」もので,歴代CEOの発言から上場廃止までを振り返る形式です。ここで十分に注意しなくてはいけないのは,事件の当事者ゆえのバイアスです。とりわけ,不本意な形で会社を追われた方の見方・主張には十分注意する必要があるのではないかと。この第2回を読んで強くそう思いました。当たり前のことですが,ここで語られている内容は,当時のCEOが認識した事実であり評価です。客観性があるわけではありません
車谷氏はアクティビストの悪辣さを縷々語っています。アクティビストからいかに会社を守るか様々な策を巡らせたとも。その後も,「短期利益主義のアクティビストに上場廃止に追い込まれた東芝」という構図は何度もメディアで語られてきました
ところで,車谷氏は(改正されたばかりの外為法所管する経産省の力をかりて)今話題のエフィッシモに対抗しようとして返り討ちにあっております。東芝は騒動が落ち着いた頃に,真因究明と責任の所在の明確化を目的として委員会を設置し2021年に「ガバナンス強化委員会報告書(委員長金築誠志)」が公表されました。ここで明らかにされた事実や評価はかなり客観性があると思われますが,以下のような記述があります。
エフィッシモは、東芝の株価が下落したときに、リスクを取って東芝に対する投資を開始し、2017 年12 月に行われた約6000 億円の割当増資に当たっても多額の投資を行った上、2020 年当時においてもその株式を保有し続けていたのである。当委員会との意見交換において述べられたエフィッシモの投資手法についての説明(中長期的な企業価値の向上に伴う株価の値上り益や配当を享受するために、潜在的企業価値に比べて割安な株式に投資を行うといういわゆるバリュー投資をその投資手法としているというもの)は、上記の株式取得の経緯やその後の保有状況に照らして不自然なところはない。こうした株主との間では、本来、中長期的な企業価値の向上が会社との共通の目的となっていたはずで、東芝は、企業価値の向上に向けた議論を深めていく努力をすべきであったとの見解は、複数の有識者アドバイザーから示されている車谷氏は海外増資をアホなことだったと批判していますが(正確には「東芝の長い歴史の中でも最大の汚点となる経営判断の誤り」😅),米国原発関連の大規模損失を処理して上場を維持するにはそれ以外手段はありませんでした(国内増資等が不可能だったことについてコチラ)。当時は従業員・取引先を含めたステークホルダーすべてが上場維持を希望しており,あのとき上場廃止していればよかったという主張はただの後知恵でしかありません
また,報告書にあるようにエフィッシモは必ずしも短期利益を希望していたわけではなく,むしろ,東芝の日本人役員が無用に敵対的な態度をとったことが事態を悪化させたというのが委員会の見立てです(拙稿でもこの評価に従いました)。
そして、いわゆるアクティビストと言われる外国投資ファンドにも、その背後の投資家の属性などにより様々な活動形態があり、これを一面的に捉えることができないことは、既に広く知られているところであり…外国投資家が発行済み株式の6 割を超える株式を所有する状況の下においては、外国投資ファンドの属性、これまでの活動状況等を調査・検討し、自らの経営計画や経営方針についての理解を求めつつ、外国投資ファンドとの間の対話を深めていく努力をすべきであったことは有識者アドバイザーの多くが指摘するところであり…それにもかかわらず、東芝の執行役や日本国籍の取締役の多くが、外国投資ファンドに対する一面的な見方を変えることができず、CEO の上記のような認識や対応を是正することができなかったことについては、東芝の組織としてのガバナンスの脆弱さがあったものといわざるを得ない。そのことが、外国投資家との健全な信頼関係の構築を阻み、本件一連の行為を生む原因の一つとなったみることができるのではなかろうか私は委員会報告書のこの部分はいまでも妥当性がある真っ当な評価だと考えます。日経新聞の読者の方には,記事を読んだ後で委員会報告書も併せてご覧になることをおすすめします。
2年が経過したとはいえ,東芝の上場廃止ネタになると,われながらつい熱くなってしまいます。イケませんね('◇')ゞ
