三ッ星の課徴金処分事例について何か面白いことを書け,というご依頼を受けた原稿の締め切りが間近に迫っています。ウルフパックとは何か大量保有報告制度違反とは具体的にどういうことか,三ツ星の概要は…といったところは書けました。しかし,論稿を公表するに当たってはオリジナリティは不可欠な要素です。誰が書いても同じような内容の退屈な読み物を出すことに意味はありません。しかし,面白くもない独自性を押し出しても ( -`ω-)✧ドヤッ,それはそれで独りよがりの残念な研究者のレッテルを張られて終わり
オリジナリティと面白さの追求に苦悩しているのですが…こんな感じなら面白そうだな,という切り口が見えてきたので,ブログの場を借りて下書きを作ってみます,どうせ週末だから,いいでしょう('◇')ゞ
ウルフパックの餌食となった三ッ星の,群狼氏らに対して課された課徴金が,大量保有報告制度の「共同保有者」を認定したものでなかったことは先日コメントしたとおりです。しかも,支配権獲得が成った後にわずかばかりの課徴金支払いを求めても抑止効果はありません。
違反しても当局の制裁を受けにくいこと,共同保有者の立証が困難であること,これをどうにかしないと今後も上場会社がウルフパックに悩まされるので困るよネ,ということ。
立法の動きとしては,金融庁で検討課題とされたのが、共同保有者については主として「協働エンゲージメント」対応で,それ以外に実質株主の透明化が別途テーマとして設定されました。大量保有報告制度のエンフォースメントはどこ行った
立案当局の動きを一歩引いて眺めていると,協働エンゲージメントにせよ実質株主の透明化にせよ,イギリスをモデルにして法制度を組みなおそうとしているのではないかという気がしています。
梅本剛正「なぜイギリスでは議決権行使助言会社の影響力がアメリカほど大きくないのか」
日本が大量保有報告制度で当事者の「合意」を前提にした共同保有概念を用いているのは,イギリス法を参考にしたものと推察されます(アメリカ法なら「協調行為をするグループ」概念で,こちらであれば立証はより簡単だったはず)。ここで,注意すべきなのはイギリスではもともと機関投資家業界団体における投資先企業への経営介入が行われてきたので,それを阻害しないように大量保有報告制度の規制が設けられてきたことです(上記拙稿参照)。立法当時,日本ではイギリス法の背景を十分に認識しないまま規制を取り入れたと推察され,このように(狭義あるいは立証が難しく)設定した共同保有概念がわが国にウルフパック戦術を招き入れたともいえます。
イギリスでは共同保有概念は日本法よりさらに絞りをかけて「継続的な共同の方針を採用することを相互に義務付ける合意」という形で,個別の株主総会の議決権行使の合意すら排除するようになっています。近年協働エンゲージメントを促すうえで,わが国の大量保有報告制度の「共同保有者」が広すぎると解されるようになったため,遅ればせながら先の金商法の改正論でも手当てしようとしたわけです(わが国の「共同保有」概念はウルフパック戦術対策には対象範囲が狭すぎ・ないし立証が困難で,協働エンゲージメントには広すぎる中途半端なものといえるかも)。
ここで疑問が生まれます。それではなぜイギリスではウルフパック戦術が行われていないのか?協働エンゲージメントのために,共同保有を狭く捉えるなら,現在の日本のように上場企業に狼の群れが寄ってきても不思議ではないはず。
これに対する答えがイギリス法の株主確認制度の存在です。制度上は大量保有報告制度が上場審査局の規則(DTR)であるのに対して,株主確認制度は会社法に根拠があります。大量保有報告制度の閾値未満の小規模な株主の確認も可能となるならウルフパック戦術も困難になるでしょう。日本でも会社法改正で実質株主確認制度を設けようとしているのは,イギリスに倣ったからといえそうです。
しかしここでも注意すべき点があります。まずイギリスの大量保有報告制度の閾値は3%だという点。5%のわが国よりもかなり低く設定されているんですね。さらに,株主確認制度についても議決権停止制度などがキッチリと設けられていて実効性は確保されているということです。日本ではカストディアンに問い合わせれば実質株主が容易に判明するるみたいな議論を目にしたりしますが,その背後にさらに信託保有株主@海外居住などがいたらどうするのでしょうね?
いずれにせよ,これまでの立法過程を見る限り,群狼退治のために実効性が担保されない制度ができる可能性があるので,そうなれば議員立法で是正すべきだという考えに変わりはありません…ありゃりゃ,最後に「若干の考察」として規制の動向について触れるはずが,これだけ書くと頁制限を大幅に超えてしまいますね。もうしばらく悩まなくては
