2015年に不正会計問題が発覚した東芝に対し有価証券報告書の虚偽記載などによる株価下落で損失を被ったとする投資家らが損害賠償を求めた訴訟で、23年12月の東京地裁判決が波紋を呼んでいる。判決は、「実質株主」は原告として訴訟を起こせないと指摘。海外の投資家に「米国などと相反する判断だ」と反発の声も上がるローランドの次は京成について取り上げようと思っていたところ,こちらの記事が目に留まりました。東芝の2015年発覚の不正会計に対する損害賠償請求事件について,カストディアンの背後にいる実質株主の請求が認められなかったというものです。事件そのものは存じていましたが,この論点は完全にスルーしておりました('◇')ゞ これを機会に少し考えてみます。
東京地判令和5年12月21日資料版商事法務480号122頁
前に使ったカストディアン(名義株主)と実質株主の関係の図を応用しました。株主にとっての株主とは株主名簿上の株主であり,上場会社の株式(振替株式)であれば,権利の帰属は振替口座簿の記載又は記録により定まります(社振法128条1項)。つまり名義株主が株主としての権利を行使できることになります。
混乱しないために確認しておきますと,名義株主は東芝に対して損害賠償責任の追及はできます。それを前提にしたうえで,実質株主の機関投資家に請求を認めるのか,ということですね。すぐに思いつく不都合は,名義株主と実質株主が請求した場合に二重払いしてしまうリスクを会社が負ってしまうのではないか,ということです。
名義株主と実質株主との間の契約関係がどういうものか,外部からは分かりませんし,名義株主が複数介在することもありますが,そうなると誰が実質株主なのか,どの実質株主に何株帰属するのかが分からなくなってしまいます
実質株主に原告適格がないからといって泣き寝入りをしろといっているわけではありません。
このように解しても、名義株主が非名義株主原告の指示等を受けて被告に対して損害賠償請求権を自ら行使したり、(それが現在のカストディ契約の実務上現実的でないというのであれば)非名義株主原告が名義株主から当該債権の譲渡を受けたりすることは可能であり(本件において、たとえ非名義株主原告が、自らが「実質株主」として損害賠償請求権を有するとの見解を抱いていたとしても、本論点に係る法的リスクがあることは明らかであった以上、その法的リスクへの対応として、消滅時効が完成する前に訴えを提起するに当たり、自身の上記見解からは「念のため」という位置付けになるが、上記のような債権譲渡を受けておくといった対処をとることは可能であった。)、本件においてそのことが困難であったことをうかがわせる事情は認められないから、非名義株主原告の権利保護に欠けるところはない。名義株主に損害賠償請求をさせたり,名義株主から債権譲渡を受けたりすることは可能だったはずだということですね。
考えたことのなかった論点ですが,判旨は説得力があると感じました。この扱いが一般的になれば,今後は実質株主が損害賠償請求権の消滅時効がくるまえにカストディアン等から債権譲渡を受けて訴訟を提起する実務が一般化するのかな。日曜の朝にぼ~っとした頭で判決を読んで,大雑把に考えただけですから,考えを改めるかもしれませんが,さしあたってはこんなところです
