「いやあこの買収はたいしたものです、さすがの僕もできませんでした。ただ北尾さん、政府と同じ扱いにしてくださいね」。村上世彰(64)がSBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝(73)に「仁義」を切った。2023年9月に村上が率いる投資会社エスグラントコーポレーションがSBI新生銀行の1割株主に浮上するときだ村上氏がSBIによる新生銀行の子会社化に割って入っのは非常に驚きでしたが,当事者であるSBIの北尾氏にとって予想外であったかどうかは諸説あるようです。先日も双方が共同であおぞら銀行買収に乗り出すのではないかという観測報道が出ていましたが,SBIは村上氏の新生銀行への介入を黙認していたとみることも可能かもしれません
とはいえ,この件はこれ以上詮索しても仕方ないので止めましょう。記事で興味深かったのは,村上氏が残ったままで公的資金を返還するために優先株を使うというアイディアです。公的資金の返済方法としては前々からSBIは当面は剰余金の配当で返済していく方針を示していました。村上氏にも平等に配当を支払うなら配当原資が減り公的資金の返済ペースが落ちてしまうので,預金保険機構等の保有株を優先株にしてそちらにだけ配当を支払うというやり方は,有効な手段のように思えます。種類株を使うためには,株主総会の特別決議が必要ですが,1割程度しか保有しない村上氏は抵抗できません(法律上全く争えないわけではないですが…争わないでしょう)
公的資金の返済の関連でSBIが優先株に言及するのは実は初めてではありません。TOBが成功した2021年12月時点で,北尾氏は「非上場化した後、政府に新たに優先株式を発行する選択肢もある」と述べていました(日経:SBI北尾社長、新生銀行の非上場化検討)。
このときに念頭においていたのは,新生銀行の株主となったSBI・預金保険機構・整理回収機構のうち,預金保険機構等には配当を支払いSBIは配当支払いを受けない形にするために優先株を利用しようとしたのでしょう。つまり,村上氏にはSBIと一緒の種類株主になれ,ということかと。邪推するなら,国と同じように配当を貰えなくても,あおぞら銀行との経営統合で村上氏はご褒美をもらうことになるかもしれず,かりにそうであれば反対しないのかも。
ところで,思いつきなのですが,公的資金の返済方法は配当以外でも,自己株取得という方法があります。いまは1株の価値が巨額ですが,大幅な株式分割をして国から少しずつ保有株を取得していくという方法も可能ではあるのでしょうね。必要があれば国の保有株の一部をSBIが直接取得してもいいわけですし。ただ,村上氏がいる状況でこの方法を使うと,公的資金返済が進むにつれて国の保有比率が減少し村上氏の議決権比率が上昇するので,優先株の方が無難なのかもしれないですね
