「社外取締役、受難の時代が到来」に関連して😐 ~2点ほどコメントを

日経(日経ヴェリタス):社外取締役、受難の時代が到来 フジテック4勝9敗の衝撃 株主総会でアクティビストと対決
エレベーター大手のフジテックが2月下旬に開いた臨時株主総会は、社外取締役の選任を争い、アクティビスト(物言う株主)が勝利した。企業統治への関心の高まりとともに、存在感を増しつつある社外取締役は決して楽な商売ではないことを世に知らしめた
 主として会社支配権争いについて面白い記事を提供する奥記者の記事です。今回はフジテックの争い等を例にとり,社外取締役の職責が甘くないことを指摘するものです。

 記事全体の論旨については,特段異論はなく,むしろその通りだと思うのですが2点ほどコメントさせて頂ければ。
 1つはさほど本質的なことではないですが,4勝9敗ではなく4勝10敗でしょ,ということです。図表で示される株主総会決議結果を見ると,たしかに,会社側可決2+株主提案否決2=会社4勝,株主提案議案可決4+会社提案否決5=9敗となりますが…
選択:フジテック社外取が「敵前逃亡」 大和総研元専務理事に非難轟轟
 ハイ,不戦敗が1つありました。臨時株主総会直前に「一身上の都合」ではなく「ガバナンスに関する考え方の違い」を理由に辞任された方が星取表に入っていないのは問題ですよね。「選択」の記事でも書かれているように,批判された「会長」人事に関わっておきながら自分に対する解任議案が出された途端,考えが違うので辞めると言い出すのは,社外取締役としてという以前に人として…。 試合を放棄して不戦敗の方を「勝敗表」に入れないのは,「解任された経歴はない」外観を取り繕いたい御本人の思惑どおりになるので,これに触れない点で記事は物足りないです
 それにしても,この方はシンクタンクの理事,法制審議会委員,証券取引等監視委員会委員…と立派な肩書が揃っており,しかも女性という理由からか,味の素東京ガス(監査委員長)といった一流企業の社外取締役に就任しておられるのですね,社外取締役制度って(以下略) ┐(´-`)┌

 もう1点は,以前も申しましたように,監査役にほとんど注目が集まらないのはどうなんだ,ということです。記事にあるサッポロビールのケースは経営方針に関わる不満なので,取締役会マターでありアクティビストも社外取締役に注文を付けたということ,これはこれで理解できます。
 他方でフジテックのケースは,(オアシスは経営について問題提起をしていたものの)議論の焦点は創業家の利益相反行為でした。候補から外した株主総会直後に内山氏を「会長」に祭り上げたのは取締役会であり,それはそれで問題ではありますが,それまでの「不適切な取引」は監査役が調査すべき事項であり,必要に応じて取締役会に意見を具申すべきものではなかったかと。
 もちろん,攻めるオアシス側の戦術としては,理解できます。社内取締役を残して経営の安定性を確保しつつ,社外取締役を刷新して経営に睨みを効かせる,というやり方は他の株主の支持を集めるうえで有効で,実際に成果を挙げました。決議要件のハードルが3分の2に上がってしまう監査役の解任議案を入れなかったのも合理的といってよいでしょう。

 とはいえ,ガバナンスの本質論からすると,フジテック事件において,(社外取締役と同様に)監査役は一体なにをやっていたのだ,という点がまったく議論にならないのは,個人的には違和感を拭えないところではあります