日産自動車が1月に元代表取締役のグレッグ・ケリー被告(65)を横浜地裁に提訴したことが18日分かった。元会長、カルロス・ゴーン被告(68)の報酬過少記載事件で、不正を避ける善管注意義務を果たさずに会社に損害を与えたとして約14億円の損害賠償を求めている。提訴は1月19日付。先日東京地裁で日産元取締役ケリー氏の刑事裁判の判決がありました。双方控訴したので,高裁判決が待たれるところですが(私もこの裁判には大きな関心を持っています),今年の1月に日産はケリー氏に損害賠償責任を追及する訴訟を提起していたそうです
先の刑事裁判では法人としての日産も両罰規定により2億円の罰金を科され,争うことなく支払いに応ずるようです。両罰規定と役員の損害賠償責任の関係については,山口利昭先生のブログでもコメントされており,学界でも議論されているところです(近時のまとまった論考として,高橋陽一先生の「法人に対する罰金・課徴金と役員等の損害賠償責任」参照)。
今回は刑事裁判の判決が出る前の訴訟提起で,賠償請求額14億円ということなので,日産が課された課徴金(約24億2500万円)についてのものなのでしょう。
法令違反行為を理由に会社が支払った課徴金について,当該違法行為に関与した取締役が賠償責任を負うというのは一般論としては,認められるところです。責任ある取締役の責任追及をしなければ,現在の取締役の任務懈怠が問われかねないでしょう。
が,日産のケースでは,世間的な関心は,ケリー氏以外の取締役はどうなの?という点にも広がりそうです。ゴーン氏への多額の役員報酬の支払い約束と有報への不記載については,他の取締役も十分過ぎるほど責任は認められるのではないか?ケリー氏1人に責任を擦り付けてそれで足りるのか?このあたりは,折に触れてメディア等で取り上げられるネタではないかと思われ,訴える側の日産もかなり悩んだところではないかと推察されます
とはいえ,個人的な関心は別のところにあります。つまり,当ブログの立場は,ご承知の通り「ゴーン氏の役員報酬不記載は虚偽記載であっても重要性要件は満たさないので金商法上の虚偽有価証券報告書提出罪等にはあたらない」というものです。上級審でケリー氏の無罪判決はありうると見ておりますが,日産は今回の事件について課徴金納付命令にも罰金支払いにも争わずに応じています。
もしケリー氏の無罪判決が確定したらどうなるでしょうね?日産は争っていれば免れる可能性のあった課徴金・罰金を支払ったことになりますが,その判断について日産の取締役の責任は問題にならないのでしょうか?
もちろん,司法取引等で検察の助力を得てCEOを追い出した以上,罰金にせよ課徴金処分にせよ争うことなど事実上できなかったのは分かります。処分を受け入れる判断について任務懈怠責任を問われても,経営判断原則の保護を受けることは理解できます。
しかし,自らはお上の処分を争わずに,支払った課徴金等につき特定の取締役にだけツケ回しをするというのも,かなり筋ワルな話ではないかと思うのですが
ゴーン氏の逮捕劇から4年近く経ちますが,この事件はまだまだ目が離せないですね
