日産自動車の元会長で、金融商品取引法違反の罪などで起訴されたカルロス・ゴーン被告の役員報酬を過少に報告したとして、同罪で起訴された同社元代表取締役のグレッグ・ケリー被告(65)に対し東京地裁は3日開いた判決公判で、懲役6月、執行猶予3年の判決を言い渡した。同被告側は判決を不服として控訴する意向ケリー氏は判決に不服があるとのことで控訴するそうです。求刑懲役2年に対して懲役6月、執行猶予3年というのは,被告側としてはかなり頑張ったといえそうです。しかし法律家であるケリー氏としては,納得できない判決を争うのは,当然のことなのでしょう
日経:不在のゴーン元会長の「有罪」認定 日産企業体質を非難
日経:司法取引した元幹部の証言、信用性を厳格評価
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の報酬過少記載事件は、2018年に始まった司法取引制度が活用され、公判では同制度に基づく証言の信用性が争われた。3日の東京地裁判決は、裏付け証拠がなければ信用できないと厳しく判断した。元代表取締役、グレッグ・ケリー被告の関与の立証が不十分として、起訴された2010~17年度のうち17年度の1年分を除いて無罪とした判決を読まないと,報道だけでは詳細は判断できませんが,興味深かったのは,司法取引の証拠の評価について。起訴された8年間の「虚偽記載」のうち1年分のみ共謀が認めらたのは,司法取引で得られた証拠の評価を厳格にしたからだそうですが,この点については,元東京高裁裁判官の方の仰るとおり適切な判断だと思います。
ケリー氏が虚偽記載も共謀もなかったという点で争いたかった気持ちは分かりますが,裁判で重要性要件が主たる争点にならなかったのは残念です。犯罪の成立要件なので,判示はしているのでしょうが,おそらくアッサリと肯定したものと思われます。これじゃあ議論が深まらないですね
なお,残念なことに黒沼先生と私とでは「重要性要件」の解釈が異なるようです
加えて,「虚偽記載の金額がどの程度であれば罪となるかといった判断基準を明確にすべきだった」というコメントにつきましても,重要性要件は「高度に事実に即した(fact-specific)性質を有するもの」(Matrixx Initiatives, Inc. v. Siracusano, et. al. 131 S. Ct. 1309 (2011))であり,客観的基準には馴染まないものであることを踏まえるべきでしょう。ベーシック事件判決のいうように「重要性要件のように本来的に事実に即して認定すべきものについて、特定の事実や事象が常に決定的であるとするような、いかなるアプローチも、必然的に過小であるか過剰であるかのいずれかとならざるをえない」(Basic Inc., v. Levinson, 485 U.S. 224 (1988))ので,客観的基準を定立するのは不可能ではないかと。
※ズラズラとアメリカの判例を示しているのは,日本ではほとんど見るべき議論がないからで,判例・学説の積み重ねのあるアメリカを参考にせざるをえないからです。衒学的だなんて思わないでくださいね♡
非財務情報の開示で重要なことは,有用な情報を開示することであり,ムダな情報を開示させないことでもあるわけです。そういう見地から非財務情報の重要性という問題も考える必要があり,ゴーン氏の報酬虚偽記載は重要性要件を満たさないと考える次第です
