公正な委任状勧誘のルールを定めるべき ~ 天馬の議決権行使書面一体型委任状勧誘を見て【追記6月16日 ( ゚Д゚)先例アリ!実務に定着か??】

天馬:委任状による議決権行使のお願い
 天馬のHPを見たところ,12日付けで株主総会招集通知とともに上記資料がアップされていました。私は天馬の経営権争いについては,株主でもないうえに内情を知らないのでどうこういう立場ではございません。ただし,会社側・経営陣側の行為について法的に見て問題がありそうなものが散見され,それらについては(金商法研究者の末席に名を連ねる者として)指摘しておきたいと考えております。上の委任状勧誘の扱いについてもそうです。
 会社側の委任状勧誘というと,昨年度のLIXILの旧経営陣による委任状勧誘でも問題になりました。(株主提案側の)元最高裁判事の方が疑問を呈したように,かなりミスリーディングな勧誘方法だったため,株主側が争ったところ,会社側が適正に扱う旨約束したことでとりあえず収まりました(LIXILの会社側委任状勧誘で瀬戸氏らの差止請求は認められず【追記】)。LIXIL事件では,会社が委任状勧誘をしていることすら適時開示もされませんでした(遅延開示はされたけど)。
 今回,天馬の会社側は委任状勧誘をしている旨,またその勧誘の文書も上記のとおり,ちゃんと適時開示をしており,ここは評価できます(東証さんの指導でしょうか?)。
 ただし,当該文書の4頁をみますと,議決権行使書面と委任状用紙が一体となっているではないですか。
議決権行使書と委任状が一体となっておりますので、同封の返送用封筒にて議決権行使書を切り離さずに委任状と一緒にご返送いただけますようお願い申し上げます
 しかも,図の説明では議決権行使書面には記入せず委任状の方に記入することを求めています。たしかに,委任状だけで勧誘するならこれで構わないですが,議決権行使書面と一体の委任状って…。各社の総会関係文書でも,会社側の見解は掲載するにせよ,議決権行使書面の賛否の記入については,中立的な説明をしているはず。コチラに〇を入れろだとか,議決権行使書面には記載せずに委任状に記載しろなんてことは書いたりしないでしょう。委任状と一体だからこういう説明が許されるという理屈はあるのかな?こういう書式を使われると,多くの株主は戸惑うでしょうね。上場会社の総会関係文書なら,大手法律事務所のチェックが入っていると思うのですが,実務的にはコレがOKなんですか(>某事務所様)??
 もちろん,招集通知をみると,委任状以外でも議決権行使できる旨が記載されています(招集通知3頁)。委任状であれ議決権行使書面であれ,ちゃんと各議案の賛否欄は設けられているので,問題ないようにも見えます。しかし,モノクロ刷りの招集通知・参考書類とは別にカラー刷りの委任状勧誘文書と議決権行使書面と委任状が一体となった書面が同封されていたら,普通はカラーの方を見て記入するでしょうね。
 さらに,委任状の文字が小さくて読めないですが,おそらく,議案以外の動議については受任者に委任する内容となっていると思われ,そのあたりも狙っているのかもしれませんね。司法試験受験生の必修知識ですが,議長不信任動議など議事進行上の動議が出た場合に,議決権行使書面の票はカウントされないけど,委任状の票はカウントされます。委任状で株主提案側に賛成の議決権を行使した株主の票も,会社関係者が受任者となれば議長不信任動議などでは,(委任者の合理的意思と異なり)会社側の票として動くわけです。
 最近の事例をみると,経営対立で票差が微妙な株主総会では,会社側の委任状勧誘は,あまり公正な形で行われないようです。そろそろ,委任状勧誘規則を改正して公正な勧誘のためのルールを設けることが必要ではないかという気がします(具体的に改正すべき内容は今すぐは思いつかないけど)。有報と事業報告の一体開示なんて議論をしているのだから,議決権行使書面は法務省管轄,委任状は金融庁管轄という時代でもないでしょう
【追記6月16日】
 ネットを探しておりましたら,上記のとおり議決権行使書面と委任状が一体となったものは,すでに何件か使われているようです。
1つは昨年度LIXILの旧経営陣が使っておりました。
LIXIL:当社委任状による議決権行使のお願い
また,レオパレスの今年の総会でも使われていますね。
臨時株主総会招集ご通知
知らんかった…

 いずれも,票差が微妙な経営権争いです。大手法律事務所の指導やエライ先生の意見書に基づいているのかもしれないけど,会社法・金商法の趣旨から考えて,私はこんな形の議決権行使と委任状の一体型というのはおかしいと思います。株主の合理的な意思形成・情報に基づいた判断というものをどれだけ軽く考えているのだろう。こんな実務が定着してもいいのだろうか?メディアはともかくとして,会社法実務や研究者の界隈で議論にすらなっていないのが意外ですね
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