GPIFの貸株停止は訳がわからない (-"-) ~GPIF自身のガバナンスはどうなの?

日経:GPIFが貸株停止、海外に波紋 ESG投資時代、是非議論に
Reuters:World's largest pension fund halts stock lending to short sellers
※2つ引用したのは,本日の日経のこの記事が12月3日付のロイターの記事の内容に極めて似ている,という問題提起です(皆さんはどう思います?)

 チェックを怠っていましたが,GPIFは5日前に保有株式の貸株を停止する旨のリリースを出したそうです。
GPIF:株式レンディングの停止について
株式レンディング(貸株)は、所有権が借り手に移転し、GPIFの保有に実質的な空白状態が生じることになるため、スチュワードシップ責任との整合性を欠くという懸念があります。また、現在行っている株式レンディングのスキームでは、貸し出した株式の「最終的な借り手」や「用途」が確認できず、透明性が確保されていないという課題もあります。
GPIFが貸株を停止する理由は➀スチュワードシップ責任と整合性を欠くこと,②借り手の用途に透明性が確保されないこと,の2点のようです。正直言って,貸株をすると投資先企業とのスチュワードシップ責任と整合性を欠くという理屈が私には今一つ理解できません。なぜスチュワードシップ活動をするかというと,対象企業と馴れ合うためではなく,企業価値を高めるためです。そうすることで,GPIFの保有する資産の価値を高めることができるからです。貸株も保有する株式から得られるリターンを高めるために行うものです。
GPIF earned 37.58 billion yen ($345.91 million) in fees from lending shares from its foreign equity portfolio over three years to the end of its 2018 financial year
これまでGPIFは,貸株業務により3年間で378億8千万円稼いできたわけですが,貸株業務を停止することで,これをみすみす放棄することになるわけです。この判断が合理的であるためには,GPIFは貸株の停止によりスチュワードシップ活動が向上する結果,向こう3年間で378億8千万円を超える追加リターンが得られることを証明できなきゃいけないでしょう。貸株停止で業務収益は確実に減少するけど,貸株停止で向上するスチュワードシップ活動のリターンって…あるの?
 自分のお金の運用ならともかく国民の年金資金の運用を委託されているのなら,もう少し丁寧な説明が必要なのではないでしょうか。わずか14行のリリースで納得する人は少ないと思います。
 ②の理由付けについても,空売りが濫用目的で利用されている,という懸念に基づくものでしょうが,それはどの程度蓋然性があるのでしょうね。確実にいえることは貸株が細ると空売り業者は困ることになるので,空売りの対象になりやすい,たとえば,奇矯な言動が多くメンタルが弱い経営者を擁するテスラのような会社は喜ぶということ(とはいえテスラの問題は空売りではなくガバナンスだと思いますけど)。
 基本的に空売り自体は市場の価格形成に有益なものです。空売りが濫用されるおそれがあるというのなら,こちらについてもシッカリと説明すべきで,抽象的なリスクだけでこういう判断をすべきではないでしょう。そもそもGPIFが貸株を止めれば空売り(の濫用?)が無くなるという関係にあるわけでないことも注意が必要かと。
 ガバナンスといえば,GPIF自身もなにかと世間を騒がしているようで(東洋経済:衝撃事実!GPIF理事長「処分」は謀略だった 160兆円を運用する年金ファンドの異常事態)…コーポレートガバナンスの議論は,上場企業のガバナンスの問題だけではなく機関投資家自身のガバナンスの問題でもあるとは古くから言われてきたことで,ESGとかスチュワードシップ活動とかいう以前にGPIF自身のガバナンスを見直した方がよろしいかと。
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