役員報酬の開示は報酬プログラムを事後的に評価できるようにすべき

日経:ゴーン元会長逮捕が問う報酬ガバナンス
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕は動機などを含め、いまだ全容の解明には遠い。現時点で確かだと思うのは、事件をきっかけに日本で役員報酬に関する企業統治ルール、「ペイガバナンス」の議論が活発になるだろうということだ。日本社会では忌避されることも多かったお金の話に経営者は向き合い、株主への説明責任を果たす必要がある。
たしかに,今回の事件で役員報酬制度に注目が集まるのはたしか。それは結構なことだと思うのですが,その方向が「日本も役員の巨額報酬に進むべきか否か」という話に進むとすればあまり実りあるものではないような気がします。上の記事は報酬決定の透明性確保にポイントがあるようですが,たとえば,今回の件で
東洋経済:「ゴーンの報酬」をアメリカ基準で見てみたら
>過少申告前のゴーン会長の実際の報酬額が5年間で99億9800万円とすると単純平均で年間約20億円となる計算だ。この金額は日本企業で比べると高いがアメリカ企業トップと比べるとどの程度の水準なのだろうか。
という記事があります。記事の結論は,「今回の事件で報道されている内容、あるいは今後明らかになる内容はともかくとして、報酬水準だけに注目してみると、世界水準では決して高くない。」というものですが,何度も申し上げているとおり,アメリカと日本では役員報酬の開示の仕方が異なり比較ができないので,こういう作業はほとんど意味がありません。
 たとえば,時価100円のA社が取締役に@200円で自社株を購入する権利(ストックオプション)を10万個与えたとしましょう。A社の経営陣と従業員が努力した結果,A社の株価が500円まで値上がりして取締役がストックオプションをすべて行使して,(5000-2000万=)3000万円を得たとしましょう(自社株処分とインサイダー取引規制の問題は措いておく)。
 日本法での報酬開示は,100円のときに付与された権利のオプションの価値が報酬として開示されますが,行使価額が200円ならさほど多額ではないでしょう(たとえば,総額で100万円?)。日本の報酬開示制度では付与後に取締役がオプションをどうしたかなんて開示されまへん。これに対して,アメリカでは3000万円の売却益が報酬として開示されます。
 新聞・雑誌の役員報酬の報道の仕方は,以上の違いを踏まえずに「日本の役員報酬は100万円なのに対してアメリカの役員報酬は3000万円で,アメリカは高額報酬の国」といっているようなものです。
 日本ではストックオプション分の報酬が低く開示されるのでオカシイ,と申し上げたいわけではありません。権利行使価格を時価の2倍に設定したけど,それをクリアーした取締役は褒められるべきで,会社の報酬制度はちゃんと経営陣に褒美を与えた,業績連動型報酬として機能した,という事実は開示すべきだ,と申し上げたいわけです。
 株価を上げたのだから,株主もハッピー,オプション行使で出回る株数が若干市場に増えても気にしない,会社からの持ち出しはナイ,⇒だから開示しなくてもよい,ということではなく,当初の報酬プログラムがちゃんと機能したかどうかは開示して外部の評価に晒される必要があるはずです。かりに,企業努力ではなくバブル経済など外部要因で株価が上がったり合理性を欠いた自社株買いにより力ずくで株価を上げて権利行使していたら,それは報酬として適当ではないでしょう。役員がいつ権利行使して幾ら得たかを時系列で開示し,(行使時の株高の要因なども含めて)事後に検証できなきゃいけない。でも,日本ではできないんですよね。コーポレート・ガバナンスコードだとかスチュワードシップ・コードなんかでも上場企業に業績連動型報酬の導入を促すなら,本当はこのあたりまで求めるべきかと
フリーメールですが,アドレスは次のとおりです。 6580072★gmail.com (★に@を入れてください) 誠に申し訳ないですが,必ずしもすべてのメールに対してご返事をするとは限りませんので,悪しからずご了承下さい  m(_ _)m